20世紀を代表する巨匠パブロ・ピカソは、長い名前の持ち主であることでも有名です。
「ピカソ本人も長すぎて覚えていなかった」という話もあります。
この記事では、ピカソの本名が長い理由、名前の意味、そして「ピカソの名前は『ツルハシ便利』という意味である」説の真偽についてまとめました。
パブロ・ピカソの本名は?
ピカソは洗礼の記録と出生証明書記録の2つがあります。
それぞれのピカソのフルネームは、次の通りです。
[ ピカソの洗礼名 ]
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・クリスピン・クリスピニャーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・マリア・デ・ロス・レメディオス・アラルコン・イ・エレーラ・ルイス・イ・ピカソ
[ 役所に提出されたピカソの出生証明書 ]
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・シプリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ
ピカソの名前が長い理由
なぜ、ピカソの名前は長いのでしょうか?
実は、ピカソの名前が長い理由には、スペインの風習が関係しています。
スペインでは夫婦別姓が当たり前。子供の名前には両親それぞれの姓をつけるので、子供も別姓になります。また、子供の名前に、祖父や叔父など親戚の名前を入れることもよくあります。
ピカソの名前が長いのは、たくさんの親戚の名前や、キリスト教の三位一体を表す名前、ゴッドマザーの名前が詰め込まれているからなのです。
ピカソの本名の意味は?
最初の「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ」の部分は、ピカソの父や先祖の名前から。
「クリスピン・クリスピニャーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード」は、キリスト教の三位一体のこと。
「マリア・デ・ロス・レメディオス・アラルコン・イ・エレーラ」はピカソのゴッドマザー(女性の後見人。 カトリックにおいて、子供の洗礼式に立ち会って名を与え、霊魂上の親として保護する役割を担う)の名前。
「ルイス・イ・ピカソ」は姓の部分です。
スペインでは、生まれた子供は両親の姓をどちらも受け継ぐ風習があるため、「ルイス」が父方、「ピカソ」が母方の姓になります。ちなみに、「イ(y)」はスペイン語で、英語でいうところの「and」です。
「ツルハシ便利」を意味する説は本当か?
ネットで人気の小話で、「ピカソの名前の最後の部分は『ツルハシ便利』という意味であり、先祖がツルハシを使って仕事をする芸術家だったことからきている」というものがあります。
たしかに、それが本当ならかなり面白い名前ですが・・・
しかし、これはデマであるという説もあります。
「ツルハシ便利」は、英語でツルハシを意味するピックアクス(pickaxe)と、ピカソという音の響きが似ていることから来たただのジョークであろうとのこと。ちなみに、スペイン語のツルハシはピケタ(piqueta)です。
一方で、Oxford Referenceのページで「Picasso」の単語を調べると、下記の解説が出てきました。(※ざっくり翻訳です)
「イタリア語およびヒスパニック語(主にメキシコとアルゼンチン):リグリア方言のpicassu(picu「つるはし」から)という未検証の単語からのニックネームで、おそらく石工を表すのに使われた。」
たしかに、職業由来の苗字は他にもよくありますし(Carpenter=大工、Baker=パン屋、Potter=陶工など)、ピカソという名前が「石工」由来である可能性は考えられます。
まとめ
「ツルハシ便利」までいくとジョークの可能性も否めませんが、「石工」が由来の名前であるという説には説得力がありそうです。
パブロ・ピカソの生涯と画風の変遷、代表作品について知りたい方はこちらをご覧ください。